次世代を見据えた「総合実践」の在り方に関する研究
商業主任会総合研究班
1 はじめに
今日,国際化,情報化や,科学技術の進展,環境問題への関心の高まり,少子高齢社会の到
来など,社会の状況が大きく変化する中で,21世紀を生きる人材を育てるため,豊かな人間
性をはぐくむとともに,一人一人の個性を生かしてその能力を十分に伸ばす新しい時代の教育
の在り方が問われている。
このような背景の下に,平成8年7月の中央教育審議会第一次答申においては,これからの
学校教育の在り方として,[ゆとり]の中で自ら学び自ら考える力などの[生きる力]の育成を
基本とし,教育内容の厳選と基礎・基本の徹底を図ること,一人一人の個性を生かすための教
育を推進すること,豊かな人間性とたくましい体をはぐくむための教育を改善すること,横断
的・総合的な指導を推進するため「総合的な学習の時間」を設けること,完全学校週5日制を
導入することなどが提言された。
そこで,平成8年8月に,文部大臣から教育課程審議会に対し「幼稚園,小学校,中学校,
高等学校,盲学校,聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」諮問が行われた。
また,専門高校の教育内容等に関しては,平成9年5月に,文部大臣から理科教育及び産業
教育審議会に対して,「今後の専門高校における教育の在り方等について」諮問を行った。理科
教育及び産業教育審議会においては,産業界で必要とされる知識や技術・技能の高度化等を踏
まえ,完成教育としての職業教育ではなく,生涯学習の視点を踏まえた教育の在り方や技術革
新,国際化,情報化,少子高齢化等による社会の変化や産業の動向等に適切に対応するための
新たな教科の創設を含めた教育内容等について検討を進め,平成10年7月の答申において,
専門高校における教育の改善・充実のための視点として,次の6点が示された。
@将来のスペシャリストとして必要な専門性の基礎・基本の重視
A新教科「情報」「福祉」の創設等,社会の変化や産業の動向等に適切に対応した教育の展開
B生徒の多様な実態に対応し,生徒の学習の選択幅をできる限り拡大し,生徒一人一人の個
性を育て伸ばしていく教育の展開
C専門高校と地域や産業界との間のパートナーシップ(双方向の協力関係)の確立
D生徒が専門高校卒業後に学習する継続教育機関との連携の推進
E各学校の創意工夫を生かした特色ある教育の展開
教育課程審議会においては,中央教育審議会の第一次答申をはじめ数次にわたる答申や理科
教育及び産業教育審議会の答申に留意しつつ,約2年にわたり審議を行い,平成10年7月に
答申した。この答申においては,幼児児童生徒の実態,教育課程実施の状況,社会の変化など
を踏まえつつ,完全学校週5日制の下,[ゆとり]の中で「特色ある教育」を展開し,幼児児童
生徒に[生きる力]を育成することを基本的なねらいとし,次の方針に基づき教育課程の基準
を改訂することが提言された。
@豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。
A自ら学び,自ら考える力を育成すること。
Bゆとりのある教育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教
育を充実すること。
C各学校が創意工夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること。
これらのねらいに基づき,教育課程の編成,各教科,科目等の構成,内容,単位数等の改善
方針が示された。
この答申を踏まえ,平成10年12月14日に幼稚園教育要領,小学校学習指導要領及び中
学校学習指導要領を改訂したのに続き,平成11年3月29日に,盲・聾・養護学校の学習指
導要領等とともに高等学校学習指導要領の全面的な改訂を行った。高等学校学習指導要領は,
平成15年4月1日から年次進行により段階的に適用されている。
この改訂において教科「商業」は,経済のグローバル化,高度情報通信ネットワーク化等の
進展の中で,「経営活動」に包含された「商業の諸活動」が,これまで以上に拡大し活動内容が
変化することが予測されること,また,我が国の教育においては,これからの学校教育の目指
す方向についての基調の転換が図られていることから,教科の目標について次のような観点か
ら改善を行われている。
一つは,[生きる力]という生涯学習の基礎的な資質の育成を重視した商業教育を展開するという観点である。
このことは,今後の商業教育の目指す方向の中に,自ら学び,自ら考える力などの[生きる力]
という生涯学習の基礎的な資質の育成を重視するという基本的な考え方を取り入れ,商業教育
のねらいを,継続教育を視野においた専門性の基礎・基本の教育に重点を移すということであ
る。
二つは,経済社会の変化に柔軟に対応できる能力の育成を重視した商業教育を展開するとい
う観点である。
このことは,今後の商業教育においては,望ましい人間関係の形成や社会生活上のルール
の習得などの社会性,社会の基本的なモラルなどの倫理観の育成に努めるとともに,各分野の
学習においては,マーケティング能力,国際交流能力,会計活用能力,情報活用能力という経
済社会の変化に柔軟に対応できる能力の育成に重点を移すということである。
このように[生きる力]という生涯学習の基礎的な資質の育成や,経済社会の変化に柔軟に対
応できる能力の育成を図る観点から,教科「商業」では,商業教育の対象を幅広くビジネス,
商品の生産・流通・消費にかかわる経済的諸活動の総称として捉えるとともに,教科のねらい
を従前の「経営管理的能力の育成にも配慮する」から「ビジネスの基礎・基本の能力の育成に
配慮する」に改め,教科の目標については,ビジネス教育の視点を明確にした。
教科の総合的な科目に関する教育内容では,「課題研究」は,生徒の多様な実態に応じて個々
の生徒の特性や進路希望などに即した教育活動を一層適切に進めていくことの必要性や,問題
解決のための継続的な学習の一層の推進を図ることをねらいで設けられた科目である。この科
目は,原則履修科目として位置付けられている。
「総合実践」は,原則履修科目としては位置付けられていないが,実践的な活動による商業
の総合的科目であることには変わりない。この科目では,商業の教科組織上の4分野で学んだ
流通ビジネス,国際経済,簿記会計,経営情報の各分野に関する実践に内容を精選するととも
に,各分野の実践の中でビジネスゲームを取り扱えるようにするなど内容を改善された。各分
野で学んだ知識と技術をマーケティング能力,国際交流能力,会計活用能力,情報活用能力と
いう総合的な能力とするための実践的・体験的学習として,この科目を活用することが望まれ
ている。
2 研究の目的
平成19年度,岡山県商業教育協会の改組から,従前の総合分野運営委員会に代わり,商業
主任会総合研究班が新たに設置された。当研究班は,当面する商業教育の総合的科目(以下総
合分野)に関する課題について調査研究を目的としている。総合分野には,「課題研究」,「総合
実践」があるが,今回は前委員会の研究を引き継ぎ,「次世代を見据えた『総合実践』の在り方」
を研究テーマとして研究することとした。また,その研究過程で,望ましい指導方法,指導内
容や課題を浮き彫りにすることを目的にした。
3 研究の経過
(1) 第1回商業主任会(総合研究班)
期 日:平成19年6月28日(木)
場 所:岡山県立岡山東商業高等学校 百周年記念会館
出席者:副理事長他11名
@ 本年度の研究テーマ設定について
A 各校の現状報告
B 学習指導要領から「総合実践」の再認識
(2) 県外視察
視察日時:平成19年8月5日(日) 9:30〜17:45
8月6日(月) 10:00〜12:00
視 察 先:8月5日 一橋記念講堂(東京)
グローバルリーダーシップ・フォーラム
東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター内
8月6日 群馬県立前橋商業高等学校
群馬県前橋市南町四丁目35番地の1
視 察 者:岡山県立烏城高等学校 教諭 桑田 卓己
岡山県立岡山東商業高等学校 教諭 福岡 明広
@ 小・中・高校教員のためのグローバルリーダーシップ・フォーラム
Global Leadership Forum for Elementary, Jr. & Sr.High School Teachers
ア パネルディスカッション
「トップ企業の人事部は人の何を見ているか 人と企業との本質的な関わりについて」
岩城宏斗司氏/三菱商事ヒューマンリソース開発センター部長 (商社・流通)
木谷豊氏/キッコーマン人事部部長 (メーカー)
橘正喜氏/三井住友銀行人事部部長 (金融)
坪田國矢氏/日本アイ・ビー・エム人事担当取締役執行役(情報)
中許善弘氏/ジュニア・アチーブメント日本専務執行役理事(モデレータ)
イ 「教員に対する経済教育の米国先進例」
ジョーペリー氏/全米経済教育協会執行役副会長
ウ 再現授業
「一橋大学大学院ゼミ生も参加して竹内教授の指導を壇上で実際に再現」
竹内弘高氏/一橋大学大学院教授 国際企業戦略研究科科長
エ 壇上インタビュー
「文部科学省・布村審議官に聞く/ここが聞きたい−教育問題の核心」
布村幸彦氏/文部科学省大臣官房審議官 初等・中等教育局担当
オ プレゼンテーション
「成長の源泉とは何か/ジュニア・アチーブメント プログラムがもたらす成果」
兵庫県立大学付属高校におけるSCP活動の実践報告
豊田洋介氏/大和証券グループ本社CSR室次長
「生徒指導は企業人が行なうとどうなるか」
カ 壇上トップ対談 「武雄の部屋/人の才能の見つけ方・引き出し方」
堀 威夫氏/ホリプロ取締役ファウンダー
椎名武雄氏/ジュニア・アチーブメント日本理事長
(日本アイ・ビー・エム相談役兼経営諮問委員会議長)
キ 講演「日本を取り巻く国際環境について」
齋藤圭介氏/経済産業省経済産業政策局産業再生課課長
A 群馬県立前橋商業高等学校
ア 「総合実践」の学習内容,施設・設備
イ 教育的な意義・成果,課題
ウ 学校設定科目「起業実践」との関連性
高橋紀幸教頭,大河原誠教諭,滝澤光生教諭
(3) 商業主任会(総合研究班)
期 日:平成19年9月28日(金)
出席者:副理事長他8名
@ 第1回会議より
A 研究委員会について
B 視察報告
C 研究協議「次世代を見据えた『総合実践』の在り方」
(4) 商業主任会(総合研究班)小委員会
期 日:平成19年10月29日(月)
場 所:岡山県立玉島商業高等学校
出席者:副理事長他5名
@ 研究委員会について
A 研究協議「次世代を見据えた『総合実践』の在り方」
(5) 商業主任会総合研究委員会
期 日:平成19年11月12日(月)
場 所:岡山県立岡山東商業高等学校 翠光会館
出席者:副理事長他28名
@ 講話
「今,ビジネス界が求める人間力」−学校教育で対応すべき諸能力の育成について−
おかやま若者就職支援センター 主任キャリアカウンセラー 粟井謙甫
A 視察報告
ア 小・中・高校教員のためのグローバルリーダーシップ・フォーラム
イ 群馬県立前橋商業高等学校
岡山県立烏城高等学校 教諭 桑田 卓己
B 研究協議「次世代を見据えた『総合実践』の在り方」
ア 育てたい生徒像は,どのようなものなのか?
イ それを実現するためにはどうしたらいいのか?
ウ 設問イのためには,今何が足りないのか?近づけるためには?
4 研究の内容とまとめ
平成元年の改訂で「総合実践」は,第3節の目標に,「商業の各分野に関する知識と技術を実
践的活動を通して総合的に習得させ,ビジネスの諸活動を主体的,合理的に行う能力と態度を
育てる。」とある。
「商業の各分野に関する知識と技術」とは,「商業」の各分野の既習の知識や技術をさし,「実
践的活動を通して総合的に習得させ」とは,社会に出ることを想定した疑似体験(シミュレー
ション型)授業を展開することにより,既習学習の内容を相互に関連性をもたせて有機的に総
合化することをさし,「ビジネスの諸活動を主体的,合理的に行う能力と態度を育てる」とは,
疑似体験授業の中で,自らが目で見て,頭で考えて,積極的に行動に移す能力を育てることを
さすと考えられる。
つまり,学校における商業教育と実務の架け橋の役割を果たすように努める科目である。す
なわち,この科目では,あまりに基礎的,基本的事項を重視して指導すると現実の実務から遠
くなり,また社会に近づけた指導をすれば生徒にとって学習が複雑困難になるという問題を抱
えてくる。したがって,この科目においては基礎と応用,理論と実際がほどよい調和を保つよ
うに指導内容が計画される必要があると考えられる。
ここに県内の「総合実践」に関する調査結果(平成19年6月)がある。
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県内の31校の回答から,「総合実践」の開設校が減少していることがわかる。その原因は,学
習指導要領の改訂で,「総合実践」が原則履修科目としては位置付けられていないこと,就職よ
りも進学希望者が増え,教育課程自体も進学志向になっており,そのため「総合実践」の時間
がとれないことが要因であげられた。また,「総合実践」は,以前の「商業実践」,「経理実践」,
「事務実践」や「貿易実務」などを統合して昭和45年改訂時に新たに生まれた科目である。
しかしながら,その改善主旨が活かされず,「商業実践」の指導内容・方法から脱却することな
く展開されている実情から,「総合実践」を本当に指導する必要性があるのかどうかという賛否
があった。
「総合実践」の在り方はどうあるべきなのか,その答えを県外視察,地元就職支援団体の意
見や研究委員会の協議に求めた。
県外視察からは,「トップ企業の人事部は人の何を見ているか - 人と企業との本質的な関わ
りについて」というテーマでのパネルディスカッション((1)-@-ア)の中で次のような資料
を得ている。
Q1 求人で重要視しているファクターは?
・ポテンシャルを見て採用。学生時代に何をしてきたのか?
・幅広い人に認められるキャパを持っているのか?
・プロ意識を持っているか?
・チームで仕事をすることができるか?
・コミュニケーション能力,意識の共有はできるか?
・専門分野を持っているか?
・人間性を持っているか? 変革,挑戦心を持っているか?
Q2 現在働いている人の人事評価はどのような点に置いているのか?
・評価要素 ポテンシャル(能力)および一定期間の成果
(もちろんポジションは考慮する)
専門能力は積み上がっていく。自ら企画実行をしてきたかどうか?
指導力・リーダーシップについても評価の対象。
評価方法 面接・レポート
目標設定→評価→自信→課題設定内容を上げる(次回目標)
※育成しないで評価だけするのは間違い
Q3 変化に対応する人材を求めるというがどのような人材なのか?
・企業の中で手取り足取り教えている時間はない
自分でなにをしたいのか?社会で変化したいのか?・・これを自覚している人
つまり,主体性のある人
・前提症候群(前提がはっきりしないと議論を進められない)ではダメ
何が問題で何を考えるのかがわかる人・・問題発想力や探求力のある人
恥を知る心・感動できる心
プチ挫折をしたことがある人
・主体的にできる人
・メンタルストレスが自己流でも解消できる人
また,県外視察での群馬県立前橋商業高等学校の学校訪問では,温故知新のスタンスで社会
に対して常に高いアンテナを立て,時代の流れを捉えつつ,商業高等学校では何を学ばせ,何
を身に付けさせるべきなのか,ビジネス教育の不易と流行の住み分けを見極めながら,取り組
んでいきたいとのことである。
実践概要は,学校設定科目「起業実践」の実施である。従来通り簿記・情報・英語の資格取
得を目指した知識習得型学習を中心とした取り組みの中で,「21世紀の産業界のスペシャリス
トを育成するビジネス系進学校」としての役割を果たすことが,大変重要な「特色ある学校づ
くり」の一つの方向性であると考えている。そのような中で,地域活性化活動について授業展
開し,探求型学習がビジネス教育にいかに効果的であるかに気づいている。生徒に実学的な教
材としてうまく提示できたとき,教室内での知識や技術の習得の場とは違った,実社会で自ら
考え,解決していく姿勢や意識が体験的・実践的な学びの場で確立されていくことが,「生きた
ビジネス教育」であると感じている。また,このような取り組みからこれからのビジネス教育
はどうしたらもっと社会に認めてもらえるのか,ビジネス教育はどうあるべきなのかを,多く
の教職員が考える機会にもなっている。
地元就職支援団体の講話からは,昨今の雇用情勢,雇用関連数値の検証,フリーター・NE
ETの推移,フリーターの実態と背景,フリーター問題の社会的課題など生々しい数値とあわ
せて労働環境の現況と若者が目の当たりしている実情を赤裸々に紹介された。
最後に研究委員会では,次に3つの観点から研究協議を進めた。
1点目には,育てたい生徒像は,どのようなものなのか?
2点目には,それを実現するためにはどうしたらいいのか?
3点目には,前問のためには,今何が足りないのか?近づけるためには?
この3つの観点には,あえて「総合実践」という概念を外し,単に教育観を問うことを試み
ている。その中で,「総合実践」教科目標,指導内容や指導方法につながるものが見えてくるで
はないかという仮説からである。
各観点には次のような回答が寄せられた。
|
育てたい生徒像は |
それを実現するためには |
今何が足りないのか |
|
・社会人のプロを育てる≒人間としてのプロを育てる。
|
・3年間や教室の中では無理→学校外へ出させて人的資質を育てる。
|
・時間が足りない,関わってくれる大人(社会人)が足りない,体験できる場が足りない。 |
|
・学び続ける姿勢を育てる。
|
・世の中の興味・好奇心を育てる→心豊かにさせることも大事。 |
・課題発見力の不足。 |
|
・何事にも意欲的に積極的に取り組むことの出来る生徒を育てる。 |
・何事にも興味づけできる指導に心がける。 |
・指導者として熱意が足りない。 |
|
・卒業してからもしっかりと生きていける力を育てる。 |
・己を知らせる,自分が何もできないことに気づかせ プチ挫折感を味あわせる。 |
・生徒の目的意識の持たせ方に工夫が必要である。 |
|
・100%地元就職してくれる人材を育てる。 |
・やらせてみて,見させてみて,気づかせて,地域のよさを発見させる仕掛けづくりをする。 |
・学校外でも体験活動への仕掛けや学校外の評価を取り入れたい。 |
|
・自分自身の将来設計はもちろん他人へのアドバイスができる人材を育てる。 |
・企業人などの講師として招いた授業を多く取り入れる。 |
・自分で考えそれを行動に移す実行力やコミュニケーション能力を育成する方法 |
|
・常に問題意識を持ち,課題に対して自ら考え行動する人材を育てる。 |
・実践を伴わせる。→地域に出て行く,地域を呼び込む,地域に返す。 |
・生徒を見る目をもっと養いたい。 |
|
・どこに行っても,人から可愛がられる人材に育てる。 →社会に役立つ人材 信頼される人材 |
・授業の中で人間力アップできる事があれば,その場面を捉えて,取り扱う。
|
・指導への自分自身の気持ちの持続と時間の限界を打破したい。
|
|
・主体的に動け,協力し合え,時間を守れる人材を育てる。 |
・班活動を取り入れ,何か自信を持たせられるようする。 |
・多くの機会を設け,時間をかけたい。
|
|
・TPOに応じた柔軟さを持ち合わせ,倫理観を持った社会に貢献できる人材を育てる。 |
・世の中の動きを伝え,学ぶことには,ひとつひとつねらいや意味があることを伝える。 |
・ゆとりと余裕を持ちたい。 教員間の共通理解をしたい。
|
|
・商業で学んだ知識をトータル的に社会で活用できる人材を育てる。
|
・資格取得の励行はもちろんであるが,具体的にどう活用していくかを説く。
|
・教科書の切り売りをやめ,社会現場で何が行われ,何を求めているのかという情報を収集し,生徒に伝えたい。そのような科目も足りない気がする。 |
|
・自分の人生を主体的に考え,自己実現を計画的に果たしていけるよう能力開発していける人材を育てる。 |
・教師自身が背中・姿勢で示す。 |
・学校全体で取り組むには,時間,設備,人,やる気が足りない。 |
(回答の一部抜粋要約)
総括すると,1点目での協議からは,共通して「教育のゴールは社会」が明確にされ,卒業
後の最終の準備としての「総合実践」の位置づけと教育目標がうかがえる。しかも教科「商業」
としての教育目標である,社会へ出すための重要なミッションを抱いていることもうかがえる。
「人としてのプロであって欲しい」という意見は究極的な答えで,「人としてのプロ」には,企
業人としてのプロ,親としてのプロ,地域人としてのプロの意味が込められている。
これは,本協会が研究を重ねてきた,起業家精神また人間力とほぼ同意ではないかと考え,
「人づくり」を軸にしている観点からも「総合実践」は重要科目であり得る。
2点目での協議からは,学校だけが,教育の場ではなく,地域や経済界などと連携し,これ
まで学ばせた学習内容を点から線へ,さらに立体へと進化させることが必要であることがうか
がえる。その際には,成功体験だけではなく,社会にもまれて感じ取ることができる失敗経験
を体感できる仕掛けも必要であることがうかがえる。つまり,「総合実践」の教育内容のここに
ヒントがあるように思われる。
3点目での協議からは,「授業改善」,「指導と評価」とよく言われるが,今後の指導方法の工
夫点や評価基準を作成する上での手がかりが見えてくる。
5 提言
さて,「次世代を見据えた『総合実践』の在り方」への提言であるが,次の4点を考える。
@各分野の学習を総合した内容に関する実践を取り扱い,学習内容を総合的に活用できる知
識と技術を習得させる。なお,各分野の実践の中でビジネスゲームを取り扱う。
A各分野を横断した総合的な内容に関する実践を取り扱い,学習内容を総合的に応用できる
知識と技術を習得させる。
B必要に応じて企業等における実習を取り扱う。
また,生徒が実習する企業等の選定にあたっては,生徒の興味・関心,進路希望や地域産
業の実態を考慮して幅広く決定する。
C学科の特色,生徒の進路希望等に応じて選択して取り扱う。
※各分野とは,流通ビジネス分野,国際経済分野,簿記会計分野,経営情報分野をさす。
また,今研究で一番重要に感じることは,「指導者の意識」にあると考える。今学校で預かり
目の前にしている生徒たちに,どのような準備を最終的にさせて,社会に役立つ人として送り
出すことができるのか,つまり,単に「総合実践」が経理実務の集大成的な学習に陥らずに,
社会に出すという意識をきちんと持って指導者が授業展開することが不可欠であることを検証
することを加えて提言したい。
そのためには,課題として単独商業高校・併設校・総合学科などどのような学校の実情にも
対応できるような「総合実践」が望ましいことや既に開設を取りやめた学校にとっては再考す
るか否か,あるいは,開設しないならば,どこでこのような科目と同等の目標を達成させるべ
きなのか検討するべきではないだろうか。また,専門高校の他学科には,生き物を相手にする
ことや製品製造をおこなう上で職人気質をもった厳しい指導が見受けられる。商業教育に置き
換えるならどのような指導が必要なのであろうか。
6 おわりに
「次世代を見据えた『総合実践』の在り方」を研究テーマとして,総合分野の「総合実践」
の研究を推し進めてきたが,限られた時間の中での研究となり心残りの感がある。
しかしながら,この研究テーマから,商業教育の本質を見直す機会が与えられ,班員一同,
また研究委員会に参加の先生方は,有意義な時間を過ごしたように思われる。つまり,ある
特定科目の研究や分野の研究では,どうしても指導内容や指導方法に目を向けすぎて,方法論
の研究になりがちであるが,今回は総合分野,いわば「森」から「木」を見つめることができ,
今研究内容が,今後「総合実践」はもちろんのこと,大いに教科指導に活かされると思われる。
ただ,課題として,今後の「総合実践」がどのような名称で改善されようとも,各校・各学
科・各学年に,よりふさわしい学習内容と指導方法を見いだし,実践,検証し,「次世代を見据
えた」よりも「社会を見据えた」科目として存在させることが重要と考え,ここに本研究班の
報告としたい。
参考文献
高等学校学習指導要領解説 商業編 文部科学省
商業科教育法 ―21世紀のビジネス教育― 吉野 弘一著(国立教育政策研究所・文部科学省)
総合研究班研究委員
平成19年度
副理事長 岡山県立玉島商業高等学校 校長 佐藤 賢次
委 員 岡山県立岡山東商業高等学校 教諭 福岡 明広
岡山県立烏城高等学校 教諭 桑田 卓己
岡山県立倉敷鷲羽高等学校 教諭 藤井 昭人
岡山県立玉島商業高等学校 教諭 的場 恵介
岡山県立勝山高等学校 教諭 片岡 和昌
玉野市立玉野備南高等学校 教諭 井上 正一
倉敷市立倉敷翔南高等学校 教諭 山田 光則
倉敷市立精思高等学校 教諭 吉田 利行
岡山商科大学附属高等学校 教諭 山部 英樹
倉敷翠松高等学校 教諭 尾川 幸子
倉敷高等学校 教諭 末國 雅己
高梁日新高等学校 教諭 入江 信彦
平成20年度
副理事長 岡山県立津山商業高等学校 校長 直原 研造
委 員 岡山県立岡山東商業高等学校 教諭 福岡 明広
岡山県立烏城高等学校 教諭 桑田 卓己
岡山県立倉敷鷲羽高等学校 教諭 百井 孝幸
岡山県立玉島商業高等学校 教諭 的場 恵介
岡山県立勝山高等学校 教諭 片岡 和昌
玉野市立玉野備南高等学校 教諭 井上 正一
倉敷市立倉敷翔南高等学校 教諭 山田 光則
倉敷市立精思高等学校 教諭 吉田 利行
倉敷市立真備陵南高等学校 教諭 堀 勝之
岡山商科大学附属高等学校 教諭 山部 英樹
倉敷翠松高等学校 教諭 尾川 幸子
倉敷高等学校 教諭 末國 雅己
高梁日新高等学校 教諭 丸橋 正好
